NEWS

NPB+で“見える”投球コース――テクノロジーが際立たせるプロの技術

ストライクか、ボールか。そのわずかな差を、いま私たちはデータで“見る”ことができる。『NPB+』では、トラッキングシステムのデータをもとに、投球コースとストライクゾーンの関係が可視化されている。可視化によって見えてくるのは、ミリ単位の精密な世界と、それを一瞬で見極めるプロの技術である。

『NPB+』の一球速報画面。 『NPB+』の一球速報画面。

『NPB+』の一球速報画面。


■『NPB+』はMLBのABSを参考にしたゾーン設定基準


『NPB+』では、トラッキングシステムによって取得したデータをもとに、投球コースが可視化されている。判定位置やゾーン設定の考え方は、MLBで採用されているABS(Automated Ball-Strike System=自動ボール・ストライク判定システム)と同じ基準に即しており、ボールが判定位置を通過した際の座標を、ストライクゾーンとの関係が分かる形で示している。

ではその設定基準について掘り下げてみよう。

まず重要なのが、「どの位置でストライクかどうかを評価するのか」という点である。ボールはホームベースの手前から後方までを通過するため、判定の基準点をどこに置くかで見え方は変わる。特に変化球では、曲がり始めのタイミングと曲がり終わるタイミングとで、座標位置が大きく変化する。そのため『NPB+』では、MLBのABSと同様に、ホームベースの中間におけるボール位置を基準としている。これにより、判定に生じうる物理的なバイアスをできるだけ抑えているのだ。

加えて、高低の基準についても工夫がある。プロ野球選手の身長は、現役選手だけを見ても160センチ台から200センチを超える選手まで幅広い。当然ながら、ストライクゾーンの高さを全員同じ上下幅で判断することはできない。そこで『NPB+』では、ストライクゾーンの上限と下限を打者の身体基準に基づいて数値化し、設定している。こちらもMLBのABSとほぼ同じ仕様である。

つまり『NPB+』で表示される投球コースは、MLBのABSに倣い、前後方向の判定幅による影響を極力抑えつつ、打者ごとに高さを設定することで、高い精度を担保しているのである。

『NPB+』で設定しているストライクゾーンの位置。 『NPB+』で設定しているストライクゾーンの位置。

『NPB+』で設定しているストライクゾーンの位置。


■テクノロジーが可視化したプロの凄さ


もっとも、ここで押さえておくべき大前提がある。ルールブック上、ストライクかボールかの最終的な判断を下すのは、あくまで球審だということである。『NPB+』が示すのは、データ上の通過位置と理想的なゾーンとの比較であって、公式記録そのものではない。最終的な判定は人間のコールによって成立する。データは答えではなく、判断を補助し、理解を深めるための材料なのである。

そのうえで、投球コースの可視化は、観戦に新たな視点を加えてくれる。球の軌道やコース取りを視覚的に捉えられることで、投手の狙いや配球の意図、打者との駆け引きにも、これまで以上に目を向けやすくなるからだ。データによる可視化は、プレーの見え方に奥行きをもたらし、野球の楽しみ方をさらに広げてくれる。

また、この可視化は別の事実にも気づかせてくれる。プロがいかに高度な判断を瞬時に行っているか、という事実である。

プロ野球の投球速度は150キロを超える。投手から捕手までの距離は約18.44メートルで、ボールの到達時間はおよそ0.4秒。そのわずかな時間のなかで、打者、捕手、そして球審は投球コースを判断している。『NPB+』は、その通過位置をあとからミリ単位で示してくれるが、フィールド上のプロたちは、それをリアルタイムで見極めているのだ。

さらに言えば、野手たちはインパクトの瞬間にはすでに打球方向を予測して動き出し、速いものでは180キロを超える打球を処理する。この野手の動きや打球速度も『NPB+』で確認できる。

テクノロジーが精密になればなるほど、プロの感覚と技術の凄みもまた際立つ。可視化は、判定を機械的に行うためだけのものではない。むしろ、データによって野球をより深く理解すると同時に、その瞬間を支えるプロの技術の価値を再認識させる役割も持っている。

ミリ単位の世界を可視化するテクノロジーと、その一瞬を見極めるプロの目。開幕以降も表示や見せ方の微調整を重ねている『NPB+』は、その両方を“見せる”ツールとして観戦体験を支えていく。